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文系大学生が「研究の進め方」「レポート・論文の書き方」を学ぶための本-井上浩一『私もできる西洋史研究』

私もできる西洋史研究―仮想(バーチャル)大学に学ぶ (大阪市立大学人文選書)

大学に入学したものの、大した指導もなしにレポートで成績を決められて四苦八苦している大学生は少なくない。実際、成績なんて教授の偏見と独断ではないのか?と思うこともしばしばだ。

しかし、大抵のレポートは、王道の事前調査や研究の進め方を知っていれば、およそ合格点をもらえるものが書ける。そう、方法さえ知っていれば。

そのための方法論を学ぶことができるのが、今回紹介する『私もできる西洋史研究 』だ。

西洋史研究にとどまらない方法論

『私もできる西洋史研究』を読んでいる間、読者は井上氏が教授を務める架空の大学、その名も「仮想大学」(バーチャル大学;チャル大)に在籍して氏の講義を受けていくことになる。一連の講義の中で、読者は「西洋史の研究方法」と「研究をレポート・卒論として表現する方法」を学ぶことになる。

本書における彼の講義は実際の大学生活さながらであり、よくある「非現実的な例」、こんな調査はほとんどの学生にできることじゃないだろう、みたいなことが無い。このリアリティこそタイトルの「私もできる」の根拠だろう。

西洋史研究を主題にしていることで、他の分野を専門とする学生には意味が無いのではないか、という不安をおぼえる人もいるだろう。しかし、研究テーマや文献が西洋史に関するものであると言うだけで、人文科学・社会科学に属する学問を専攻する学生ならば、本書で紹介される方法は何の問題もなく利用することができる。実際に、哲学専攻の学生である私の研究方法も、本書の方法をベースにして作られている。

研究に必ず必要な、文献を読む3つのやり方

もう少し細かく、本書の中でも特徴的な部分を紹介しておこう。文献・史料を読む3つの方法だ。

その方法のことを、井上氏は「通読」「摘読」「照読」と呼んでいる。研究をする人々にとっては必ず身につけておく必要がある読書技術だ。では、1つずつ見てみよう。

通読

通読では、ノートを取りつつ本を頭から終わりまで(cover to cover)通して読み、文献の内容を理解する。

ノートの取り方については本書の最初の方で説明している他、仮想大学のWEBサイト(リンク)で資料が用意されている(余談だが、サイトでいくつかの資料を公開しているところが、この本の変わったところでもある)。

教授ともなると基本的な知識は頭に入っており、興味深いと感じた学説のメモをとれば事足りることが多い。しかし、研究する以前に基礎知識・予備知識が足りていないのなら、それにふさわしい本の読み方、ノートの取り方が必要だ。その点、この本は「研究者」と「これから学ぶ人」をきちんと区別してくれている。

摘読

通読しながらノートを取っていると、次第に「この章とあの章は関係があるな」ということがわかってくる。そのうえで、関連箇所をテーマに沿ってまとめる作業が必要だ。

そこで、文献を部分的に読み直すのが「摘読」である。こうして調査結果と研究テーマを結びつけ、その精度を高めていく。

照読

研究テーマに関連する文献を複数読み、それらを比較・検討する読書。

何冊も読んでいくと、ある問題についてさまざまな説があることがわかるだろう。それらを比べ、整理して、それを土台に自分の考えをまとめていく。この段階まで来ると、その人の活動は十分「研究」の領域に入っている。

まとめ

目次というカリキュラムのもと、4年間に渡る「仮想の」大学生活を送るという内容の本書。大学で課される課題に関して基本的なやり方を十分学べる上に、その方法は今後どんな研究活動にも役立てることができるだろう。