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「頭の回転が速い」とはどのようなことか―「頭の回転率」を決める5つの要素

 

「頭の回転の速さ」は誰もが欲するものだ。「頭の回転が速い」という言葉は、しばしば「頭がいい」と同じ意味で使われる。実際、問題の解決策を短時間で考案したり、他者の言葉にぱっと気の利いた言葉を返せたりする人は社会の中でも重宝され、それこそ「頭がいい」と賞賛される。東京大学の入学試験はその文量の多さが取り上げられることもあるが、それらを短時間で処理できる人々こそ「有能」とされ、「エリート」とみなされているのだ、ということを否定する人も少ないだろう。多くの人々がそうしたエリートへのあこがれを胸に秘めている。

 

しかし、頭の回転はどのようにして鍛えることができるのか。頭の回転という言葉は日常的に使われているが、それが正確にはなにを指しているのかをはっきりと応えられる人は少ないだろう。言葉通りに受け取るのは明らかに適切でない。頭を物理的に回しているわけではないし、ましてや回す速度が速いほど頭がいいわけではない。だが、言葉の裏側を覗いてみれば、これを鍛える方策も見えるかもしれない。

 

この記事では「頭の回転が速い」とはどのような意味か問うことで、その鍛え方まで模索していく。

 

「頭の回転」の意味とその速さを決める5つの要素

「頭の回転が速い」とは、「知的タスクの処理速度が速い」ということに他ならない。一般に「タスク」(処理しなければならないもの)と呼ばれるものには2種類あるだろう。つまり、体を動かすことで処理できるタスクと、頭を働かせることで処理できるタスクだ。今回取り上げているのは後者であり、それを知的タスク(以下タスク)と読んでいる。これを処理する速度・精度が優れていることを「頭の回転が速い」ということだと、この記事内では定義しておく。

 

頭の回転率は5つの要素によって決まる。それは、「直列処理速度」「並列処理能力」「抽象化レベル」「実行速度」「脳の状態」だ。以下の文章では、5つの要素について解説していく。

 

直列処理速度

「直列処理速度」とは、ある1つのタスクを処理する速さだ。単純な四則演算を例に挙げると、「5164÷2=?」というタスクを与えられてから、「2582」という答えを返すまでの時間の短さが速さにあたる。あるいは、「文字列を知覚する→その中に語(文字の有意な塊)を認識する→語のつながり(文)が指すものを理解する」といったような、文章を読むときの理解速度もおおよそ直列処理にあてはまる。要するに、日常生活において、集中して1つの知的活動をしているときにはこの直列処理が働いているのだと考えて良い。

 

この要素を鍛える方法は、次の2つに代表される。すなわち、「速聴」と「音読」だ。これらはともに高速の情報処理に適応する訓練であり、訓練に使う題材が異なる。それぞれ「音声」「文章」が訓練に使用される。速聴では数倍速で再生される音声を聴き取り、音読では可能な限り速く、文章を読み取り、読み上げていく。この訓練を行っている間、脳内では音声や文字認識、意味の照合などが高速で繰り返されている。その速さに慣れ、自身の処理速度も引き上げることがこの訓練の目的だ。速聴と音読は直列処理を鍛える簡単な方法に数えることができるだろう。

 

補足しておくと、より効果が高く確実であると考えられているのは音読である。速聴に関して否定的な体験談が散見される一方で、音読に関してはポジティブな意見が多い。川島隆太氏のように著名な研究者もいるため、信頼できる情報も入手しやすいだろう。私が個人的に推奨するのも音読である。

 

並列処理能力

複数のタスクを同時に処理する能力が「並列処理能力」だ。たとえば本を読みながら食事の献立を考えたり、ゲームをしながら会話したり、複数の音声を同時に聴き取ったりする力である。普段何気なくやっている処理ではあるが、それをハイレベルに引き上げることであなたに大きな利益をもたらしてくれる。

 

この力を伸ばすメリットは、タスク処理能力の倍増にある。直列処理速度を引き上げていくとやがて限界が来るだろう。しかし、その段階では1度に1つのタスクにしか頭を回せないのである。しかし、同時に2つのタスクを処理できようになると、単純に処理能力は2倍だ。直列処理を伸ばすだけでもほとんどの人々よりも有意に立つことができるが、並列処理を伸ばすことでさらに高みを目指すことができる。

 

その訓練方法としておすすめなのは、動画を2本同時に視聴する方法だ。モニターを2つ(あるいはパソコンとスマホ、パソコンの画面を分割して使うなど)並べ、私がこれを行う場合にはアニメを見ている。視聴し終わるまでの時間がおおよそ計算できて訓練しやすいし、なにより訓練の題材が娯楽なのだから継続しやすい。

 

抽象化レベル

複数のタスクを抽象化し、それらに共通の障害を見つけ出す力の度合いを「抽象化レベル」という。これは前項の並列処理の亜種とも言える概念だ。例えば、様々なタスクの中から、郵便局に行くことで処理できるタスクを選び出すこと、これも(低次ではあるが)抽象化に含まれる。生活における様々なパフォーマンスの改善を実現する共通の手段として、「睡眠習慣を改善する」ことを見出すのも同様だ。タスク群を1つ上の階層から処理しようという試みであるとも言える。

 

言うまでもなく、共通の障害を取り除くということは一回の処理で複数のタスクに対応するということである。いうなれば一石二鳥、いや一石三鳥も四鳥も目指すことができるようになるのが抽象化の力だ。これができれば並列処理と同様に、1回の処理で複数のタスクに応じることができる。4つのタスクを1回の処理にまとめる方法を発見すれば、処理能力は4倍になったと言えるだろう。

 

残念ながら、私はこの能力を鍛えるトレーニングを持ち合わせていない。普段から行っていることと言えば、「どうしたらタスクを減らせるか?」と常に問い続けることだろうか。

 

実行速度

「実行速度」とはタスクが出現してからその処理に取り掛かるまでのタイムラグがどれだけ短いかを指す。これは、上で見てきた処理のような「知的活動」ではなく、ぐずぐずせずにタスクに取り掛かるかどうかということである。メールの返信、電気代の振り込み、洗濯、選択、そういったタスクを私たちは何かと理由をつけて後回しにしがちだ。いくら頭の回転が早くても、タスクに取り掛からないのでは話にならない。そんな理由でこの記事の内容にこの項目を盛り込むことにした。ぱっと片付くことはその場でぱっとやる。当たり前だが大切な事である。

 

「実行速度」=「すぐやる力」は鍛えるものというより、ある種のクセだといえる。これを意識的に訓練するのは難しいかもしれない。ただし、先に上げたようなメールの返信や電気代の振込のような小さなタスクについて、それが発生したときにその場で処理する習慣をつけることは実行速度の向上に有効だろう。家の中で汚れが気になったらその場で掃除する、というのも良い。

 

脳の状態

脳の状態、すなわち脳がどれだけ健康であるかという点も頭の回転率には深く関わっている。寝不足の頭でものを考えるのは、速度も正確さも犠牲にする。ここからわかるのは、おそらく寝不足は頭の回転に負の影響をもたらすということだ。このように頭の回転速度を落としかねない要素はいくつか存在している。これらの要素を改善していくことで、私たちは頭の性能を高め、安定させることができるだろう。

 

代表的な要素は「睡眠」「栄養」「運動」の3つである。睡眠はいうまでもないだろう。睡眠不足が頭の回転を遅くするということは、ほとんどの人が経験的に理解しているだろうからである。次に栄養だが、これは摂取するだけで頭が良くなる栄養素(あるいはスマートドラッグ)が存在するということでは決してない。単に、栄養バランスを欠いていると認知機能が低下しかねないということだ。必須アミノ酸やビタミン、水などをバランス良く摂取しているのは頭を正常に働かせる条件の一つだ。最後に運動である。数ある運動の中でもおすすめなのが散歩だ。1時間程度の散歩で注意力が20%も上昇したというデータもある。『頭を良くするには運動しかない』という本が出される程度には、運動は頭の良さに寄与しているようだ。